「ku:nel」リニューアル

前回の投稿といい、雑誌ネタが続いていますが…
今回は、最近話題となっている『ku:nel』(マガジンハウス)のリニューアルの背景にある「読者不在」について。
具体的にいつだったかは忘れましたが、コンビニの雑誌コーナーで新生『ku:nel』を見かけました。

『クロワッサン』かと思ったら実は『ku:nel』だった…
一瞬、気付かなかったくらいの変わりように、取り立ててファンでもなかった私も驚いたのを覚えています。
昨年秋にはHanakoもリニューアルしており、両誌の変化に「マガジンハウスもついにテコ入れしないと厳しいんだな…」と出版不況という言葉を改めて噛みしめました。
と同時に、ふと浮かんだ疑問。
「これほど変わってしまって、これまでの読者がついてきてくれるのだろうか?」

ネットでよく言われる「炎上商法」を月刊誌(『ku:nel』は隔月ですが)の世界にも持ち込んだのか?とすら思いました(笑)
まぁ、雑誌の場合は、これほどの言わば炎上的なリニューアルを仕掛けたところで、新生版に魅力を見いだし購入してくれる人がいなければ意味がありませんが…。
取り立ててファンでもなかったと書きましたが、過去に数号購入しており、私の中では美しい写真とレイアウトが独特の雰囲気を醸し出ている雑誌という位置付けでした。
しかしマンネリ感は否めず、最後に購入したのは実は何年も前。
今回のリニューアルについては、賛否両論いろいろ言われているようですが、特に浮き彫りになったのは、編集部にある「読者不在」の姿勢。

飲食店に例えると、これまでは地味だけど毎回ちょっと違った世界の伝統料理を出すお店。決して万人受けするような繁盛店ではなかったが、熱心に通ってくれるリピーターが少なからずいた。
が、ある時、突然お客全員のお皿が下げられ、「あなた達は元々、これが好きだったのよ。さぁ食え食え!」と言いながら冷凍食品のフランス料理を出された…そんな感じでしょうか?

あの『ku:nel』を『ku:nel』たらしめた写真やレイアウト、そして雰囲気づくりに一役買っていたマスコット「クウネルくん」は姿を消した。
紹介している商品は以前より単価の高いものかもしれないが、これまでの誌面と比較すると俗っぽく、どこにでもある感じ。
特集「フランス女性の生活の知恵」も既食感と言うか既視感たっぷり。
中身はそのまま、雑誌名を『クロワッサン』に変えても、他の雑誌でも違和感なさそう。
そこには、編集部の、従来の読者を顧みる姿勢があまり感じられない気がするのは私だけではないと思います。
前回ご紹介したVERY(光文社)も以前は「あなた達はこれが食べたいんだ」と言わんばかりの”シェフによる完全お任せ料理の店”だったのが、今では”客が持ってくる材料をシェフが調理する店”へと生まれ変わった。
今回の新生『ku:nel』編集部のポジションは前者だと言わざるを得ないと思います。

しかし、一方で、深刻な読者離れに直面していたのは事実。
もしも「俗っぽく、どこにでもある感じ」のニーズを感じとり、具現化したのであれば、英断と言えそうですが…。
今回のリニューアルには発行部数減・広告収入不足という深刻な問題が背景にあると思います。
イギリスの各新聞社で読者離れによる経営危機が伝えられる中、新たな試みとして読者に誌面運営ができるようにするという、双方向性を象徴するような記事と、今回の『ku:nel』騒動のニュースがほぼ同時に入ってきました。

果たして、旧態依然の姿勢で読者を獲得できるのか?
答えはそのうちに出るような気もしますが。

今後の推移を見守っていきたいと思います。
…まぁ、リアルな飲食店の場合、”シェフによる完全お任せ料理の店”もアリなんですけどね(笑